Last updated: 2011/1/22
"反撃とは、一撃のもとに相手を壊滅させるものでなければならない。 (クラウゼビッツ 戦争論)”
こういうことを書くと誤解されるかもしれませんが、生物は放置しておけば、土に還るべく運命づけられており、生きるとは日々戦い続けることではないかと考えています。
治療を受ける上で大事なこと、それはセカンドオピニオンをもらうことだと、最近つくづく感じます。医師も人間です。たいていの医師はバランスをとった考えを取るよう努力していると思うのですが、知識の違い、技量の違い、自分の経験などから、どこか傾いてしまうようです。例えば、知らない治療法は紹介すらできません。自分が不得意と思う治療法はとりたくないです。自分が失敗した治療法は採用したくないし、逆に成功した治療法でやりたい。長年の経験と普段の勉強で、ある程度は克服できるはずですが、自分自身でバランスを取るのは難しいのです。また、患者さん側にとっても、納得した上での治療というのは、闘病生活において、非常に重要な要因となるようです。もしかして、あの時、別の治療を受けていたら・・・・と考えながらの闘病生活には力が入らないと思います。
セカンドオピニオンをもらいましょう。最近は、まともな病院は、病院側からセカンドオピニオンに必要な資料を渡してくれるようになってきています。資料を出してくれないドクターは、自分の医療に自信がないのかもしれません。今後もトラブルの原因となる可能性がありますから、早いうちに、ドクターや病院を代えたほうが良いのではないかと思います。手術など治療が終わってからのセカンドオピニオンにはあまり価値がありません。すでに何らかの治療を受けていた場合、その後の選択枝は大幅に減ってしまいます。再発してから、”いい病院はないでしょうか?”と探すのでは遅いのです。最初の治療が、あなたの今後の人生をほぼ決めてしまうのです。しつこいようですが、手術が必要な病気や悪性の病気の治療は、最初が肝腎なのです。
2005年現在の癌治療の最大のトピックスは、抗ガン剤治療法の進歩です。残念ながら、抗ガン剤で完治することは難しいのですが、延命やQOLの向上が期待できます。私は、抗ガン剤の専門家ではないのですが、アメリカでの抗ガン剤による治療法の進歩は、ここ数年めざましいものがあります。特に、転移や再発の時には、外科治療は無力ですし、放射線も広がりすぎていると対処できません。下記の本が詳しいので、お読みになることをおすすめします。特に、”もうホスピスしかありません。”と言われた場合など。ただし、名人芸みたいなところがあり、どのドクターでも、このような治療が可能とは思えません。相当の経験と熟慮が必要と思われます。
”抗癌剤 知らずになくなる年間30万人” 平岩正樹 著 祥伝社 2005年
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医療関係者も患者の一員です。患者の権利について、真剣にならざるをえません。2002年11月10日の読売新聞に患者の権利について投稿記事があったので引用します。著者は、医師・作家の李啓充さん。原文(翻訳)そのままです。
アメリカのマサチューセッツ州の患者の権利に関する法律は次のことを保証しています。
1) 思いやりのこもった礼儀正しい診療を受ける権利
2) 自分の病気・治療・予後について、医師・病院が把握しているすべての情報を知る権利
3) 学生や研修医が診療にあたる場合も含め、自分の診療にかかわる人々の氏名と役割を知る権利
4) 治療について承諾する権利と、拒否する権利
5) 病状が重くなって医師決定ができなくなるなどの場合に備えて、治療方針について前もって指示したり、代理人を指定する権利
6) 診察を受けたり、医師に相談する際のプライバシーが守られる権利
7) 自分の医療記録を見、コピーを得る権利
8) 臨牀研究に参加する権利と臨牀研究の被験者となることを拒否する権利
9) 依頼・要望に対し医療スタッフがすぐに対応することを期待する権利
10) 苦情を述べる権利
最近は、研修医は自分の身分を表明することが常識になりつつありますが、研修医その他のスタッフの役割を知る権利は、先進病院においても実現されていないことが多いと思います。また、意思表明ができなくなった場合にそなえて、前もって代理人を指定する権利も盲点ではないかと思います。臨牀研究を拒否する権利についてはよく話題になりますが、いい治療法が確立されていない場合、開発されつつある臨牀治験に参加する権利も、あまり実現されていないと思います。今現在、どんな臨牀治験が行われていて、可能性があるかどうかについても幅広く知識がなければ、患者さんに紹介することもできませんから・・・。
セカンドオピニオンとは、現在の担当医師以外のドクター(医療機関)の意見を聞く、というシステムです。
アメリカではほぼ常識とされているシステムですが、アメリカと日本では事情がかなり違います。アメリカでは、医師個人の細かい専門や手術件数、手術の成功率まで公開されているのです。こういう話をすると、日本は情報公開がないと批判される方がいるのですが、日本は現在はジェネラリストの国なのです。いくら自分の専門はこれだ、と主張しても、専門のことだけをすることは許されていません。専門家が専門のことだけに専念するためにはかなりの数の医師がいなくてはなりません。また、専門に絞る(深く狭く)ほうが良いのかジェネラル(広く浅く)のほうが良いのかむずかしいところです。人間は全体で一つですので、人体の一部分しかわからないのでは困るのです。実際、専門家の集合である大学病院では、意外に簡単な病気が見逃されてしまうことがあります。というわけで、病院の管理者も専門しかわからないドクターよりも、まんべんなくわかるドクターを要求することが多いと言えます。日本という国は、社会全体が、専門家を育てにくいようになっています。しかし、2002年から、保険支払いシステムが大きく変わり、専門に症例数を多く治療している病院には、報酬を厚くすることになりました。今までの護送船団方式が大きく変わったのです。今後は専門家のあり方も、相当変わっていくのだろうと思います。
セカンドオピニオンは、現時点では、時間がかかる割りに、病院の収入に結びつかないため、病院側の対応としては、難しい面もありますが、今後の自分の人生を決めるのですから、積極的に受けたほうが良いと思います。どういう病院にセカンドオピニオンを求めるのがよいかというと、各地の癌専門の病院が良いのではないかと思います。なお、近くに、セカンドオピニオンの相談にのってくれるところがない時は、近くの開業医に信頼できる病院を紹介してもらうのが良いと思います。開業医のドクターが、がんの疑いのある患者さんを診た時は、信頼できる病院に紹介することになるのが普通です。自分の紹介した患者さんがどうなったのか心配する普通の感覚のドクターであれば、長年の間に、信頼できる病院を見つけているものです。そのためには、信頼できるかかりつけ医を普段に見つけておくことが大事です。病院との連携が良い開業医のドクターは、簡単で一時的な治療なら引き受けてくれることがあります。
なお、いきがかりで、不安・不満を覚える病院にかかってしまった場合には、セカンドオピニオンを他に求めるのではなく、さっさと病院を代えたほうが良いと思います。ドクターや医療関係者との相性もあります。最初の印象だけですべてを決めてしまっては問題もあると思いますが、後々までその印象を引きずることは結構多いものです。医療関係者も、そういう患者さんの不満を敏感に感じて対応すればよいのですが、信念に固まっているドクターも少なくないので・・・
■ 腫瘍とは
腫瘍とは、簡単に言えば、”できもの”のことです。悪性のものをがんと言います。悪性という根拠は、自分勝手に増大する、体のあちこちに飛び散ることによります。また、もともとが人体の一部が変化したものであるため、薬などの治療が効きにくいことも悪性たる所以です。人間が生きていくのに必要な臓器で大きくなってしまうと、生存を脅かされることになります。がんは、自分勝手に増大するため、無秩序な組織と一般的には考えられていますが、私は、それなりの社会があるのではないかと考えています。
■ がんの社会
実際には、がんは悪性といっても、程度はさまざまです。大きくなり方が速いもの、ゆっくりしたもの、体内で飛び散りやすいもの、あまり飛ばないもの等々。場合によっては、良性の部分と悪性の部分が混在していることもあります。今の医学では、組織検査や画像診断、血液検査などを参考にして、経験的に悪性度を決めています。悪性度を推測することは、今後の治療方針を決める上で非常に重要なことです。一般的には、大きくなり方が速いものほど悪性度が強い可能性があります。なお、小さいうちはゆっくり大きくなる腫瘍も、ある程度の大きさまできたところで急に大きくなることがあり、あまり大きくならないからといって安心してはいけません。
一般的には、がんの組織検索は、細胞単位で行われることが多いです。しかし、私は、がんの組織にも社会があると考えています。正常組織と違うのは、機能が期待されていないこと、自分自身も滅ぼしてしまうこともあることです。血管との関係、中をささえる間質組織、細胞と細胞の間の組織液、周囲との関係が意味を持ちます。もちろん、中には、手当たり次第に周囲に伸びていくがんもありますが、それでも血管との関係にはある種の法則があるように思われます。こういった研究分野を私は追求していくつもりです。
■ がんの原因
人間の体表、粘膜は、多くの刺激を受けており、損傷されることが少なくありません。たとえば、熱いお茶を飲んだ時、のどの粘膜や食道の粘膜は刺激をうけ、粘膜表面が損傷してしまうことが少なくありません。また、特に損傷を受けなくても、粘膜などは細胞の新旧交代が起きています。細胞には、アポトーシス(計画的細胞自殺現象)というメカニズムがあり、異常が起きた細胞は自然に脱落します。粘膜などは自動的に再生します。再生した時に異常細胞が生じることがありますが、人体の免疫機構は、こういった異常を監視し、修復します。しかし、老化が進むとアポトーシスが起きにくくなり、また異常細胞を監視する免疫機構も機能が弱ってきます。正常でない部分が見逃され、そのままになってしまいます。こういったことを繰り返しているうちに、がんが生ずるというのが最近の考えです。したがって、高齢者ほどがんができやすいのです。時に、若い人にがんができることがあります。その原因ははっきりしていませんが、遺伝子に問題があるケースがあることは判明しています。また、免疫機構は疲労やストレスなどで減弱してしまうことがわかっており、そういった状況が長年続くと、がんになりやすいと言えます。
なお、最近は、こういった現象の基礎的部分として、遺伝子が大きく関与していることが判明してきており、遺伝子の研究が盛んになっています。まだまだ、初歩的段階ではありますが・・・。
【参考図書】
・ ’ガン遺伝子をおいつめる’ 掛札堅 文春新書
著者は、アメリカ国立ガン研究所研究員。わかりやすいし、変に書き慣れたところがありません。 おすすめです。
・ ’がん遺伝子の発見’ 黒木登志夫 中公新書
将来は遺伝子治療が行われる可能性がありますが、まだ研究が始まったばかりです。現在、悪性腫瘍の治療は、大きく5つに分かれます。手術、化学療法(注射などの薬剤)、放射線、温熱療法、免疫療法です。これに民間療法を加わります。これらは、独立して使われることもありますが、最近はそれぞれの特徴を生かして、併用するのが一般的です。
手術は、悪い部分を取り出してしまうので、もっとも信頼できますが、腫瘍が大きかったり、転移していたりすると無力です。また、腫瘍が周囲に癒着していたりすると、取りきれないので、何か別の治療を組み合わせなければなりません。患者さんの肉体的負担は、かなり大きい部類に属します。手術操作によって、がんが散らばってしまうことがあり、テクニックがいろいろ必要です。手術治療法を行う時は、がんを取りきることが重要な意味を持ちます。残してしまえば、その部分はすぐ大きくなってきます。かえって寿命を短くしかねません。
放射線治療は、放射線で悪性腫瘍もしくは悪性腫瘍に栄養を与えている血管に損傷を与えて小さくし、最終的には消滅させることを狙った治療法です。手術と違って、腫瘍がなくなるまでに時間が必要です。場合によっては2年くらいかかることもあります。手術と違って、周囲に癒着していても効果を発揮します。患者さんの肉体的な負担が少ないので、転移した腫瘍を抑えるのにも効果を発揮します。しかし、手術と違って、小さくても効果のないがんも少なくなく、適応をよく考えることが必要です。最近開発された方法として、粒子線治療があります。中性子線、陽子線、重粒子線などです。特徴は加速器が必要なことで、加速器のエネルギーを変えることで、体の奥深くまで放射線の強いエネルギーを送ることができます。まだ、研究段階ですが、重粒子線はかなり大きな腫瘍でも腫瘍縮小効果があり、手術に匹敵する方法として期待されています。
化学療法は、全身に広がった悪性腫瘍に威力を発揮します。というか、全身に広がってしまった場合、他の治療法では対処ができません。欠点は、副作用が強いことです。薬を注射すると、全身に薬が回るので、全身の内臓が影響を受けることになります。また、腫瘍によって、効くものと効かないものがあります。これらの欠点を改善する方法として、局所注射療法があります。悪性腫瘍を栄養している血管に直接薬の管を入れて、悪性腫瘍に濃度の高い薬がいくようにします。この治療はIVR技術が必要で、どこの病院ででもできるわけではないのが欠点といえば欠点と言えるでしょう。
免疫療法は、人間がもともと持っている免疫力(抵抗力)を刺激することで、腫瘍を抑える方法です。肉体的負担はほとんどないので良いのですが、残念ながら、効果が不詳です。治療法の原理としてはもっとも理想的で、まだまだ将来性も残っているのですが、現実は厳しいです。免疫学の教えるところでは、小指の先くらいのがんでないと、免疫機構でがんを排除するのは無理だとされています。
温熱療法は、体温を上げることで、熱に弱い腫瘍を抑えようという治療法です。しかし、体温を上げるのは、患者さんが耐え切れないので、限界があり、一時は期待されたのですが、結局治療法の主たる地位を占めることはできませんでした。
民間療法にはいろいろあるようです。上記の認められた治療法が万全ではないので、それを補完すべく、様々な民間療法が開発されています。しかし、科学的根拠に乏しく、大部分は、患者さんのわらをもつかみたい心理につけこんだ治療法です。中身はわからなくても、きちんと統計的に効果があるのが確認できれば、正規の治療法になれるのに、そうした努力はほとんどされないところに問題があります。
がんの治療法を簡単に比較してみました。なお、治療には、姑息的療法といって、一時のがれの治療もあります。たとえば、膵臓あたりのがんで、小腸の通過障害が起きた場合、膵臓のがんはそのままにしておいて、通過障害だけを改善するといったような延命、あるいはQOL(生活の質)を計る方法です。下記に書いた方法は、がん治療の一番最初の方針です。しかし、がん治療は一番最初が肝心なのです。ここでいい加減な治療を受けてしまうと、後再発した時などに、どうにもならななくなるのです。
| 外科手術 |
放射線治療 |
抗がん剤 (化学療法)
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| 特徴 | 取り切れれば、最良の治療法。取り切れなければ、残ったところから再発する。患者さんの負担が残るだけで治療としては不成功となる。取りきれるかどうか手術前に診断することが重要である。切除範囲をどうするのかの判断も重要である。 | 周囲に広がっていても治療の対象となる。ただし、効果のないがんもある。 |
全身に広がった場合には、この治療法しかない。特定のがん(リンパ腫や白血病)には特に効果が強い。 |
| 転移した場合 | 腫瘍の種類によっては積極的に切除することあり。 | 転移した部分のみを治療することあり。 | 効果のある場合がある。 |
| 副作用・合併症 | 手術による感染症、縫合不全等。 | 大きい場合、白血球減少。 照射部位に炎症反応。 まれに二次がん(*)の発生。 |
白血球減少。嘔吐等。 薬によって違いあり。 |
| 適応 |
脳腫瘍、食道がん、胃がん、大腸がん、子宮がん、卵巣がん、肺がんなど。 | 脳腫瘍、喉頭がん、舌がん、子宮がん。転移がん。悪性リンパ腫など。 | 白血病、悪性リンパ腫。 |
| 新しい治療 | 内視鏡的切除(がんが表面近くにしかない場合) アルコール注入(濃度の高いアルコールで細胞を殺してしまう治療法。肝臓がん) 冷凍療法(最新で副作用が少なく、希望がもてる) |
粒子線照射(設備がおおがかりで、普及していない。保険適応はまだだが、先進医療の対象となった。普通の放射線では効かないがんにも効く可能性あり。) ガンマナイフ(小さいがんで体の奥にある場合に効果的。脳腫瘍でよく用いられている) |
IVR(がんを栄養する血管に直接薬を入れる方法)。 免疫療法(まだ研究段階) 漢方(まだ研究段階)
|
* 二次がんとは、放射線照射により、別のがんが生じることで、放射線治療後10年後くらいに、まれに生じることがあります。
実際に悪性腫瘍の診断を受け、治療を受けることになった時、いろんな選択肢があるように見えますが、実際はそれほどいろいろ選べるわけではありません。病院により得意・不得意がありますし、がんの種類や進行度によっては、治療法が限定されてしまうことはよくあることです。もちろん、むりやり自分の好みの治療法で治療してもらうことも可能だとは思いますが、必ずしも得策ではないように思えます。治療法を選択したいのであれば、その治療法を得意としている病院を選ぶことが重要だと考えています。そして、大事なことは、一番最初にどこで治療を受けるかが、その後のほとんどすべてを決めてしまうことを頭に念じておかなくてはならないと思います。再発してから、”どこかいい病院はないか?”と探し回る人は後を絶ちません。それでは遅いのです。残念ながら、”いい病院”にかかれば、再発も転移もない、という意味ではありませんが、いざ問題が起きた時に、対処してくれない病院では困ることになります。ある程度大きな病院になるのは、病気の性格を考えたら当然だと思います。
私の考える、病院を選ぶ基準です。
1.自分が受けたい治療法を得意としている病院
2.診断がきっちりしている病院
おなかをあけみなくてはどうなるかわからない、などと平然と言う病院は話になりません。また、人間は全体がひとつです。部分しか診てくれない病院は避けるべきだと思います。
3.面倒見の良い病院
担当医師に対して信頼がもてること、相性の良いことも含みます。
自分が勤務している病院が合致しているかどうか自信はありませんが、精進したいと思います。
なお、こう書きますと、じっくり選ぼうと考える方がおられる方がいるかもしれません。しかし、がんの治療は時間との勝負です。特に、ある程度大きく発育した腫瘍は、悪性であれば、大きくなるスピードが上昇します。大きいほど、転移しやすいとは断言できませんが、確率は大きくなります。従って、あまり逡巡している時間はないと考えてください。同様の意味で、入院を長期間待たせる病院は良い病院とは言えません。
ガンの治療の基本は取り去ることです。すなわち、外科手術が基本です。もちろん、白血病など全身病は除きます。しかし、完全に取ることが必要です。残せば、かならずそこから、また癌が発生してきます。また、手術時には、ガンの部分になるべくさわらないようにすることが必要です。なぜなら、触ることにより、ガン細胞が周囲にばらまかれてしまうからです。
がんの診断は、最終的には組織を顕微鏡で見ることで行われることがほとんどですが、このためには、針で刺すか、切開するかする必要があり、ばらまかないように細心の注意が必要です。また、診断に必要な組織をなるべく細い針で採取する必要があります。どうしても、多少はばらまくことになるため、特に、飛び散りやすい膵癌に対しては、生検をしない病院もあります。また、針を刺したら、あまり日をおかず、治療を始めることが必要です。
同じような意味で、”手術してみたら断端陽性でした。”ということは、好ましくありません。断端陽性ということは取りきれなかったということであり、また、悪性細胞を手術時に周囲に大量にばらまいたということでもあります。断端陽性でない場合と比較して、予後が大幅に悪化します。そのために、化学療法(注射)や放射線治療を行うのですが、それは姑息的治療と言わざるをえません。徹底した画像診断を行ってそうなら、それは医療の限界でどうしようもありませんが、ほんとうにきちんと診断が施行されているのでしょうか。疑問に思うことがしばしばあります。
放射線治療とは、放射線をあてることにより、がん細胞そのものに障害を与えたり、がん細胞を栄養する血管に障害を与えることにより、がんを縮小、消滅させる治療法です。切除するわけではないので、効果があった場合、次第に縮小する、という形をとります。縮小のスピードは様々です。場合によっては、検査をしても全く変化がない、ということもあります。縮小・消滅すれば、もっとも完璧ということになりますが、変化がなくても効果があったことになります。なぜなら、がんの問題は大きくなって周囲に影響を与えることですから、大きくなるのが止まれば、問題の大部分はなくなったことになります。こうして残った部分を調べてみると、死んだ組織だったり、繊維だったりします。がん細胞が残っていることもありますが、その場合は、再発してきます。そのまま形が変わらず、長年経過すれば、治癒したといっていいでしょう。
放射線治療にも副作用があります。がんの周囲の正常な組織にも放射線があたってしまいますので、これはさけられません。まず、骨髄や血管に放射線があたることにより、骨髄細胞や血球細胞が障害を受けます。この場合、貧血や白血球減少などの異常がでます。ただし、これは大きな範囲に照射した場合です。小さい部位に照射した場合には、このような異常はでません。また、どこの部位でも放射線が治療に必要な量があたれば、炎症を起こします。肺なら肺炎、腸なら腸炎です。ただし、脳や筋肉などはあまり炎症を起こしません。一般的に、細胞活動が活発な臓器ほど放射線に弱いとされています。弱いのは胃や腸、ホルモン分泌組織、生殖器、骨髄です。最悪の場合には、腸が破れてしまうこともあります。
放射線の照射により、生殖臓器の抑制や遺伝子障害が起きることもあります。すなわち、不妊や奇形の発生です。ですから、若い人に放射線治療を行う時は、考慮が必要です。また、若い人の場合には、成長期にある骨への照射にも十分な配慮が必要です。
放射線とは?の項目でも書きましたが、現在、放射線治療で用いられている放射線の種類は、X線、ガンマ線、電子線、陽子線、重粒子線です。どの放射線も分割照射を行います。分割照射というのは、1回で放射線をあててしまうのではなく、何回にもわたって、分けて照射する方法です。分ける理由は、がんの細胞の代謝にあわせて、ちょうどがん細胞が再び活発になる時期をねらうことと、正常な組織の障害を減らすことにあります。このようにすれば、放射線量を十分にあてることができるのです。十分な放射線量をあてなければ、がんは再発します。取りきれない手術をするのと同じで、不十分な治療ということになります。
今現在、多くの病院で用いられているのは、X線、ガンマ線、電子線ですが、新しい治療法として、陽子線、重粒子線が出てきました。いずれも加速器が必要で、設備がおおがかりになりますが、シャープなエネルギーを体内の奥深くに送ることができます。シャープであることにより、正常な臓器によけいな放射線があたらないで済みます。陽子線はすでに実用段階ですが、重粒子線は、まだ研究段階です。世界でも、重粒子線治療をやっているところは、まだ一桁しかありません。日本では、放射線医学総合研究所(科学技術庁の所属)で、約1000例に対して、治療が行われました。
粒子線は設備がおおがかりで設備費用がかかるため、ガンマ線などを用いて、原体照射(体を中心として照射器を回転させる)などを行い、体内への分布を良好なものにする、という工夫が行われつつあります。ガンマナイフはその1例です。
放射線治療について比較的わかりやすく書かれた本としては次のようなものが上げらられます。一般の方が買える値段ではないですが、他に推薦できる本を知りません。図書館等で探してください。もしかしたら、新書類で良いものがあるかもしれません。ご存じの方がいましたら教えてください。
・ 新部秀男 ’放射線腫瘍学’ 講談社
■ 国立がんセンター
がんに関する情報がもっとも豊富と思われます。ただし、必要な情報を探すのはかなり大変です。
http://wwwinfo.ncc.go.jp/0sj/indexj.html
がんに関するメーリングリスト、誰でもが参加できるので、情報の信頼性には注意が必要のようです。
http://www.incl.ne.jp/~muse/cancer/